02/04/03付で
「あまり野球に詳しくない方のために」のページに追加したものですが、条項番号の繰り下げ(2.59→2.60、2.76→2.77)に伴い、こちらに移します。
08年版 『公認野球規則』2・60 PITCH「ピッチ」(投球)――投手が打者に対して投げたボールをいう。(8・01)
【原注】あるプレーヤーから他のプレーヤーに送られるボールは、すべて送球である。
2・77 THROW「スロー」(送球)――ある目標に向かって、手および腕でボールを送る行為をいい、常に投手の打者への投球(ピッチ)と区別される。
一般的なマスメディアでは、『公認野球規則』の定義に従い、「投球」と「送球」は区別して使われています。
「投球」とは、ピッチャーが打者に対して投じたものです。「送球」とは、野手(投手を含む)が、打者または走者をアウトにするために、あるいは進塁を防ぐために投じたものです。
ホームスチールが企てられた場合、ピッチャーがプレートを外してキャッチャーに投げたら、それは「送球」です。打者に対する「投球」ではありません。打者が打ってもよく、ストライク・ボールがカウントされるのが「投球」であり、それ以外は単なる「送球」です。
したがって、ショートが一塁に「投球」することなどあり得ません。すくなくとも、「セットポジション」ではありません。もしあったら、それは私の誤りです。
「外野手守備成績(1992〜98年)」のページに次のような文言がありました。
なお、野球用語における「ホサツ」とは、断じて「捕殺」ではない(「てへん」ではなく「ころもへん」が正しい)。IMEやATOKの変換辞書には「捕殺」(字義のとおり生き物を捕えて殺すこと)はあっても「補殺」はないので、Web上ではしばしば変換ミスが見られる。
これは(今では)正しくないので、訂正しました。ATOKは2007でも日本語辞書に「補殺」はありませんが、MS-IMEでは2003から「補殺」が入っています。
『公認野球規則』では補殺は次のように定義されています。
07年版 『公認野球規則』10.11 補殺(アシスト)は、あるプレイでアウトが成立した場合、または失策がなければアウトにできたと思われる場合に、そのアウトが成立するまでに、またはその失策が生じるまでに、送球したり、打球あるいは送球をデフレクトして送球を扱った各野手に与える。
ただし、挟撃のときのように、1プレイ中に同一プレーヤーが数回送球を扱っていても、与えられる補殺はただ1個に限られる。
「補殺」とは「assist」の訳語ですから、「補助」の「補」でなくてはならないのです。「捕手」や「捕球」の「捕」であってはなりません。
ためしに「野球 捕殺」でGoogle検索してみました(07/07/12現在)。まあ、名前の知れた野球部のサイトに「捕殺」があるのはまだ愛嬌だとしても、なんとスポニチ、東京新聞、日本海新聞、岩手日報、夕刊フジもヒットするのです! あろうことか、玉木正之氏の公式サイトまで出てきます。
野球 捕殺 の検索結果 約 30,500 件
野球 補殺 の検索結果 約 11,100 件
ちょっと悲しくなってきます。訳語を最初から「補助殺」にしておけばよかったのかもしれません。私はワープロ専用機を使っていた頃、「捕殺」を変換禁止用語にしていました。よそ様がどうであろうと、これだけは私が間違ってはならないものです。
ところで、IMEが「補殺」を入れたために、本来「捕殺」であるべきところに野球用語である「補殺」が使われているページもあります。読みが同じというだけでなく、字形も似ていますから、「補殺」を知らない人には悩ましいところなのかもしれません。まあ、明らかな誤字ですけど…。
=08/06/09追記=08年版の『公認野球規則』では旧10.11が次のように改正されました。
08年版 『公認野球規則』10.10 補殺(アシスト)の記録は、本条規定により、アウトに関与した野手に与えられる。
(a) 次の場合には、当該野手に補殺を記録する。
(1) あるプレイでアウトが成立した場合、または失策がなければアウトにできたと思われる場合に、そのアウトが成立するまでに、またはその失策が生じるまでに、送球したり、打球あるいは送球をデフレクトした各野手に補殺を記録する。
ただし、そのプレイでアウトが成立していなければデフレクトした野手に失策が記録されたであろうと記録員が判断した場合は、この限りではない。
挟撃のときのように、1プレイ中に同一プレーヤーが数回送球を扱っていても、与えられる補殺はただ1個に限られる。
追加された部分がありますが、一般的には「補殺」の記録など気にしない人のほうが多いわけです。だからこそ「捕殺」という誤変換がはびこるのでしょうが…。
ずいぶん昔のことですが、「得点打とはタイムリーヒットの本数のことである」と解説?していたWebサイトがありました。今、探してみても見つかりません。 あれっ? 「得点打」って、ただの「打点」じゃないの?
『公認野球規則』10.04は、1993年まで「得点打」でした。94年版から「得点打」の語句がすべて「打点」に改められています。93年以前も「打点」のほうが一般的に使われていました。現状に合わせただけのことかと思われます。
「得点打」でGoogle検索してみました(07/07/03現在)。最初にヒットするのは、Wikipediaの「野球の各種記録」です。打撃記録のところに
「得点打(打点)」とあります。改められて10数年たっているのですから、「打点(得点打)」とすべきでしょう。
2番目にヒットするのは、やはりWikipediaの「打点 (野球) 」ですが、このページには「得点打」の語句は含まれていません。3番目はボクシングのページです。
4番目は朝日新聞でした。05年に書かれた記事ですが、
「1試合最多安打32、チーム最高打率5割9分3厘、最多得点打27、最多塁打45。これらは今なお大会記録として残る」と記述されています。
これは85年夏の2回戦、PL学園対東海大山形の29対7の試合のことです。たしかに当時は「得点打」でしたが、05年に書いたものであれば、「打点」でいいはずです。実際、「週刊朝日」増刊「甲子園」の「大会記録」では93年以前も「最多打点」が使われています。
5番目はある選手の個人成績を丹念にフォローした個人サイトです。打撃記録の項目が「打点」ではなく「得点打」になっています。
6番目は明確にアウトです。
2002年2月号「チャンスに強いバッターの記録的分析方法」
公認野球規則10.04(a)では打点(正式には“得点打”と呼ぶ)を「打者が、安打、犠牲バント、犠牲フライ、または内野のアウト及び野手選択によって走者を得点させるか、あるいは満塁で、四死球、妨害(インターフェア)および走塁妨害(オブストラクション)によって打者が走者となったために、走者に本塁が与えられて得点が記録された場合には、打者に得点打を与える」(原文のまま)と定義している。
02年2月なら、最新の『公認野球規則』は01年版です。01年版の10.04には「得点打」の語句はありません。「打点」です。02年当時、すでに正式にも「得点打」とは呼ばなかったのです。なお、藤田氏がわざわざ「原文のまま」と断ったのは、「及び」と「および」が混在していることに違和感があったのでしょう。私もありますから…。
9番目にヒットするページは
「両チームの投手が毎回フォアボールを連発したり打ち込まれたりして、なおかつ得点打が出ない」との記述があります。
「得点打」を「打点」に置き換えると、意味が通じなくなります。「得点打」を「タイムリーヒット」に置き換えると、おさまりがいいのです。この方は「タイムリーヒット」の意味で「得点打」を使われているのでしょう。
ちなみに、NPBの公式サイトをgoogleでサイト内検索してみましたが、「得点打」はヒットしませんでした。もちろん、「セットポジション」でも「得点打」は用いていません。はい。
たとえば、サッカーの場合、副審(アシスタント・レフェリー)がオフサイドの旗を上げても、主審(レフェリー)が認めなければオフサイドにはなりません。最終決定者はあくまでも主審であって、副審は主審を補佐する立場にしかないのです。
野球の規則では各審判は基本的に同格であり、球審にだけ認められる権限は、打者に関する判定のほかにプレイと没収試合の宣告ぐらいです。2人の審判が異なるジャッジをした場合は、次のように定められています。
07年版『公認野球規則』
9.04(c) 1つのプレイに対して、2人以上の審判員が裁定を下し、しかもその裁定が食い違っていた場合には、球審は審判員を集めて協議し(監督、プレーヤーをまじえず、審判員だけで)、その結果、通常球審(または、このような場合には球審に代わって解決にあたるようにリーグ会長から選任された審判員)が、最適の位置から見たのはどの審判員であったか、またどの審判員の裁定が正しかったかなどを参酌して、どの裁定をとるかを決定する。
このようにして、決定された裁定は最終のものであり、初めから1つの裁定が下された場合と同様に、試合は続行されなければならない。
NPBの場合、「リーグ会長から選任された審判員」は「責任審判」と呼ばれています。球審の場合もありますが、塁審のときもあります。他競技で言う「主審」に相当するのはこの「責任審判」でしょう。
提訴のないアマチュア野球では、
アマチュア野球内規によって「控え審判制度」が採用されています。NPBの「控え審判」はアクシデントで出場不能となった審判に代わって出場する予備審判ですが、アマチュア野球で言う「控え審判」は、担当審判員が規則適用の誤りを犯している場合には、対戦当事者のアピールを待つことなく、これを訂正する権限が与えられています。いわば「影の主審」といったところです。
というわけで、野球には「球審」がいるだけで、「主審」はいません。すくなくとも『公認野球規則』には「主審」は出てこないのです。