『公認野球規則』の10・16(g)【原注】には7つの例が付されていますが、その冒頭では次のように示されています。なお、「○1」は原文では円内数字(丸数字)です。機種依存文字ですので、このように処理しています。
08年版 『公認野球規則』10・16(g)【原注】
○1 投手甲、四球のAを塁に残して退き、投手乙が救援、Bがゴロを打ってアウトになり、Aを二塁に進める、Cはフライアウト、Dが単打して、Aが得点――投手甲の失点。
新聞記者さんでも間違うのが「失点」です。上の例で言えば、乙投手が投げている間に点を取られているので、乙投手の失点だという誤解がはびこっています。
『公認野球規則』の10・16(07年まで10.18)は、自責点の項目です。索引にも「失点」はありません。つまり、「失点」を調べようとしたときに、「自責点」の項目を8ページ読み進まなければ、上の「解説」には出会えないように構成されています。
ただし、08年版の『公認野球規則』では、10・16(g)が掲載されている241ページから4ページ分のヘッダが「自責点・失点」に改められています。07年版まではすべて「自責点」でした。索引に入れたほうが親切というものなんですが…。
このエントリーは「あまり野球に詳しくない方のために…」のページ中「失点」の項目をリライトしたものです。もともとは「新聞は当てにならないことを示す極端な事例」というページでした。
「無四球試合」は3つの意味で使われています。
試合記録としての
「無四球試合」は両チームともに無四球でなければならず、チーム投手記録としての「無四球試合」はそのチームの投手が四球を与えなければいいわけです。個人投手記録としての「無四球試合」は、その投手が無四球で完投した場合です。
死球は四球ではありませんので、死球があっても四球がなければ「無四球」のはずですが、「無四死球試合」のことを「無四球試合」と言う人もいます。結局、実際には3×2で6つの意味で使われていることになります。
「セットポジション」における「無四球」は、あくまでも四球の有無を問題にしていますので、死球は関係ありません。はい。
08年版 『公認野球規則』10・14
(b) 故意四球は、投球する前から立ち上がっている捕手に四球目にあたるボールを、投手が意識して投げた場合に、記録される。
俗に「敬遠」と称される守備側の行為は、記録上は「故意四球」と呼ばています。規則文中の「四球目」には「フォアボール」とルビが振ってあるように、4ボール目に当たる投球のとき、キャッチャーが立ち上がっていたかどうかが、ただの「四球」か「故意四球」かを分けることになります。
問われるのは4ボール目だけです。走者一・三塁で普通に勝負していたところ、カウント1−2からの4球目に一塁走者が二盗に成功して一塁が空いたので、4ボール目に当たる次の投球でキャッチャーが立ち上がった場合には「故意四球」が記録されるわけです。
91/08/16の明徳義塾高対星稜高戦で松井秀喜が全5打席歩かされたのは、意図としては「敬遠」であることに疑いようもありませんが、捕手が座っていたので記録上の「故意四球」ではありません。記録には客観性が求められるからです。
さて、定義上は「投球する前」と「立ち上がっている捕手」が議論になりそうです。「投球する前」の「投球」とは、投手が投手板についたとき、投手が投球モーションを起こしたとき、リリースの瞬間、のどれを指すのか明確ではありません。
8.05(l)【注】には、
「ボールが投手の手を離れないうちに」との記述があることから、私はリリースの瞬間を基準にしています。
私の
「スコアの記入法」では、捕球時に捕手が立ち上がっていれば、投球前に立ち上がっていなくても普通のボールとは区別しています。これは「敬遠気味の四球」としてスコアカードに残ることになります。「座ったままの敬遠」のときはその旨のメモを残すようにしています。「セットポジション」ではこれらを「実質的な敬遠」と呼ぶことがあります。
また、捕手の中腰は「立ち上がっている」に含まれるのかどうかという悩ましい問題もあるわけです。私は中腰でも「故意四球」にしていますが…。
ところで、私は敬遠中の牽制球で三塁走者タッチアウトというシーンを見たことがあります。→
「似て非なるもの」
02/06/22にYahoo!で「サヨナラ犠打」を検索してみたら、25件ヒットしました。全部拝見したわけではありませんが、どうやら大半は「サヨナラ犠牲フライ」のことを「サヨナラ犠打」とおっしゃっているようです。
08/05/25に再度検索してみたら、次のようになりました。
●Yahoo!
サヨナラ犠打 で検索した結果 約321,000件
"サヨナラ犠打" で検索した結果 約578件
●Google
サヨナラ犠打 の検索結果 約 30,700 件
"サヨナラ犠打" の検索結果 約 573 件
6年前にはたった25件だったのに、今ではフレーズ検索でもその20倍です。ネット人口はこんなにも膨れ上がっているわけですが、やはり「サヨナラ犠牲フライ」のことを「サヨナラ犠打」と表現されているようです。
「サヨナラ犠牲フライ」は別に珍しくありません。
「サヨナラ犠牲バント」は絶無ではありませんが、非常に珍しいケースです。なぜなら、バント(スクイズ)でサヨナラの得点が入ったときは、通常は
「安打」が記録されるからです。
「サヨナラ犠牲フライ」のことを「サヨナラ犠打」と表現する(できる)人たちは、このデリケートな問題を深く考えたことはないはずです。「セットポジション」は野球専門のサイトです。管理人は記録マニアを自認しています。「サヨナラ犠牲フライ」を「サヨナラ犠打」と表現するにはプライドが邪魔します。
というわけで、「セットポジション」における「犠打」とは犠牲バントのみを示しており、犠牲フライは「犠飛」としています。両者を包括する場合には「犠打飛」を用いています。これはサイト開設当初から一貫していることです。
ただし、とくにアマチュア野球の場合、「犠打」と「犠飛」を区別しないのが一般的です。したがって、犠牲フライのことを「犠打」と表現しても、必ずしも間違いだとは言い切れないのかもしれません。実際、手元の辞書で「犠打」をひいてみると、次のように記載されています。
講談社『日本語大辞典』(=89年第1刷)野球で、打者が犠牲になって、走者の進塁や得点を助けた打撃。犠牲フライと犠牲バントがあり、いずれも打数には含まれない。
この国語辞典の定義にしたがうのなら、犠牲フライを「犠打」と言いあらわしても、間違いではないことになります。狭義の「犠打」は犠牲バントのみのことであり、広義の「犠打」は犠牲バントのほかに犠牲フライを含むわけです。
犠牲バントと犠牲フライは、打数に算入されませんので打率を下げる要素にはなりません。ただ、両者は出塁率計算の際に扱いが異なります。犠牲バントは出塁率を下げませんが、犠牲フライのときは出塁率が下がります。
また、得点が記録されることが「犠牲フライ」の必要条件です。一死一・二塁で打者が深いライトフライを打ち、タッチアップした二塁走者は三塁へ、一塁走者は二塁へ、それぞれ進塁しても、記録上の「犠牲フライ」にはなりません。この場合は、普通の外野フライですので、「打数」がカウントされて、打率を下げることになります。
なお、ソフトボールでは犠牲バントと犠牲フライを一括して「犠牲打」として記録しているようですので、ご注意ください。
このエントリーは02/06/23付で「あまり野球に詳しくない方のために」のページに追記した「犠打/犠飛」をリライトしたものです。
これも02/04/03付で
「あまり野球に詳しくない方のために」のページに追加したものですが、やはり条項番号の変更(2.81→2.82、10.15→10.13)に伴い、こちらに移すことにしました。
08年版 『公認野球規則』2・82 WILD PITCH「ワイルドピッチ」(暴投)――捕手が普通の守備行為で処理することができないほど高すぎるか、低すぎるか、横にそれるかした、投手の正規の投球をいう。
10・13(a) 投手の正規の投球が高すぎるか、横にそれるか、低すぎたために、捕手が普通の守備行為では止めることも処理することもできず、そのために走者を進塁させた場合には、暴投が記録される。
また、投手の正規の投球が、捕手に達するまでに地面やホームプレートに当たり、捕手が処理できず、そのために走者を進塁させた場合にも、暴投が記録される。
第3ストライクが暴投となり、打者が一塁に生きた場合は、三振と暴投を記録する。
投手がプレイボール直後の第1球をバックネットに直接当てる「投球」をした場合、これは「暴投」と呼んでいいでしょうか? 『公認野球規則』2・82の定義にしたがうなら「暴投」ですが、10・13で言う記録上の「暴投」ではありません。ランナーがいなければ10・13の「暴投」ではありませんし、ランナーが進塁しなかったときも10・13の「暴投」にはなりません。
一般的マスメディアは、「暴投」を10・13の定義で使っているものと思われます。なお、ピッチャーゴロを処理した投手の一塁送球がワンバウンドになり、ファウルグラウンドに抜けてしまった場合は「暴投」ではありません。そもそも「投球」ではないからです。
とはいえ、内野ゴロ一塁「悪送球」に対して、「暴投」を用いる解説者さんは少なくありません。野球に携わる者としては、やはり適切さを欠く表現ではないかと私は考えています。まあ、一般の人にまで、この使い分けを要求するつもりはないのですが…。